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橘流寄席文字家元の右近師が、渾身の筆力で表現した『新宿
末廣亭・都家かつ江』の長大額(縦50×横22・5㌢)で、
額中の作品は、縦38×横12・5㌢だが、厳密には縦19×
横12・5を上・下二段につなぎ、その中央にメインの「新宿
末廣亭・都家かつ江/橘右近、左近、右一郎」が上に貼り合わ
せてある。新宿末廣亭と都家かつ江は、縦13・5×横5サイ
ズ千社札となっている。その二つのメインの間に縦13・5×
横1の橘右近、左近、右一郎の名が、ズッシリしたした存在感
をかもし出している。ちなみに、上・下段の橘流寄席文字門下
の達人および御贔屓衆の名前も、橘右近、左近、右一郎と同じ
縦3×横1のサイズに納め、えも言われぬ全体的な凝縮した迫
力を演出してるように、私には見える!
院、仲のぶ・小原、浜すじ・克祐、浜すじ・石銀、浜すじ・魚
の正、浜すじ・椙圭、九段・柏屋、志津子、鎌田・章治、荒川・
安田、諸川鯉二郎、向島・とき、浜すじ・ゑん重、浜すじ・渡
辺、浜すじ・いい田、千住・魚大留、千住・水おち、千住・大
畑、子・かじ源、千笑会・岩崎、千笑会・篠塚、千笑会・小野、
ふ谷・乃本
【中段】都家かつ江・新宿末廣亭/橘右近、左近、右一郎。
【下段】右之吉、右橘、右太治、右龍、右樂、右女次、柳亭小
燕枝、つきじ・上田康、岐阜・深尾学、岐阜・梅田真、播磨・
廣瀬輝、浪花・三原貞、尾張・邦太郎、泉州・辻林孝、浪花・
田中靖、与野・川又昌、桃井・式田和、下落合・高田芳、豊島・
高練、西糀谷・赤井弘、青山・大津維、豊島・杉本照、松戸・
青木雄、松戸・上総屋、松戸・三浦桂、日暮里・豊田明、友鶴・
修二郎
※なお、独特の字体なので、判読ミスから、一部、写しまち
がいあるやも知れぬが、何卒、御容赦のほどお願いしたい!
都家かつ江、本名は利根谷タキは、明治42年(1909)に東
京浅草生まれの三味線漫談家である。都々逸や俗曲など十八番
とし〝女三亀松〟と言われた。栴檀は双葉より芳しく、父は演
芸一座の座長で、幼少から、手踊りや子供手踊りを覚えた劇団
育ちと言ってよい。
18才で清川滝三郎と結婚し、夫婦漫才『都家福丸・香津代』
デビュー。昭和22年(1947)に夫と死別。一人娘に二代目福
丸を襲名させ親子漫才に転換した。同25年、玉川一郎の薦め
で、芸名を都家かつ江と改める。三味線を用いた世相漫談や、
都々逸などが評判になり、数多くの舞台・映画・テレビ・ラジ
オ等に出演した。
ラジオ番組『大沢悠里ののんびりワイド』(TBSラジオ)で
は大沢悠里との名コンビで知られ、看板コーナーお色気大賞で
は初代の相方を務めた。同58年(1983)9月29日、脳軟化
症で他界、享年74歳であった。
翌年の 一周忌には「都家かつ江之碑」(海蔵寺)が建立さ
れた。 碑の下にかつ江愛用の三味線撥(ばち)が納められた。
また、碑の左側面に夫・福丸がかつ江に捧げた句があり、さら
に右側面には森繁久彌による献句が刻まれている。碑の隣には、
かつて上野・鈴本演芸場玄関にあった石灯籠が建てられている。
この石灯籠の最初の所有者で、彼女に御縁があったものだ。本
品も、おそらく、一周忌か三回忌、右近師が没する前の作品か
と思われるが、詳細は本品に名を連ねている方々にお聞きしな
いとわからない。
彼女は、昭和25年以後、女優として活躍した。デビュー作
は『猫と庄造と二人のをんな』で、その後も『月と接吻』『乾
杯 ! 見合結婚』『駅前旅館』『男性飼育法』『珍品堂主人』
『アワモリ君乾杯!』『青べか物語』『喜劇 とんかつ一代』
『台所太平記』『落語野郎 大脱線』『青春太郎』『新・与太
郎戦記』『青い山脈』『陽のあたる坂道』など、20数作の銀
幕を飾った。
映画業界が斜陽化した、昭和40年代からは、評判のテレビ
女優としてお茶の間のブラウン管に登場。『新五捕物帳』のと
よ役は特にハマリ役で、同番組を長寿番組に成長させた。『花
は花よめ』(第1・第2シリーズ)『傷だらけの天使 』『3
年B組金八先生』(第1シリーズ)などドラマでも脚光を浴び
た。
当初は、寄席出身の喜劇女優であったが、その後、数多くの
作品をこなすうちにシリアスな演技をはじめ、あらゆる役をこ
なすようになった。そして、彼女の女優人気により、八代目桂
文楽(1971没)や五代目古今亭志ん生(1973没)後、特に入り
の悪くなった寄席に、再びお客を戻すことに大いに貢献した。
この額の中の寄席文字作品は、縦の長さがあるので、前の所
有者の保管が完璧でなかったので、最上部には小さなキズが相
当数見受けられるが、額装したあとは、ほとんど目立たない。
むしろ、この額装は、個人宅もよろしいが皆に見てもらえるお
店に飾ると、ひときわ目立つ気がする。総勢60近い、関係者
や御贔屓の寸志により制作され、限られた方々に配られたもの
かと拝察している。送料に関しては、梱包するとかなり大きくなり